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忘れないこと「記憶」なぜ葬儀の仕事なのか?

8月12日は私にとって特別な意味のある日です。

 

葬儀の仕事に関わることになった根底にある忘れないこと「記憶」です。

 

32年前のこの日、私はまだJAL入社2年目のペーペーでした。大阪伊丹行の搭乗手続きの仕事を終え、第二ターミナルのバックオフィスに帰った時でした。

なにやらカウンター周りが騒がしく人だかりができています。バックオフィスに入ると険しい顔をした先輩たちが、大声で慌ただしく叫びあいながら、大きな紙に搭乗者名簿を書き込んでいました。

「あ!御手洗さん、紺色ね。VIPルーム行ってお茶だして!」

それだけ言われ私はVIPルームに行きました。行くまでの間手短に、先輩の男性職員が「JL123便の機影がレーダーから消えてわからなくなっている、マスコミがたくさん来てるから、関係家族をVIPルームに入れるから、お茶だして!」

 

私は、当時の制服「赤」と「紺」のブラウス。たまたまその日「紺」のブラウスを着ていたため「遺族になるかもしれない家族」への接待係に選ばれたのでした。

ご家族は5組のなかの2組でした。お茶とおしぼりをお出しして、部屋の隅に立ちました。

「テレビをつけてください!」家族の誰かが言いました。いわれるままにテレビをつけました。

すでに「搭乗者名簿」が、ずーとエンドロールのように流れていました。ご家族はご自身の関係の方の名前が出ると「わあーーーー」と大声で泣き叫びました。私は謝るべきか?なんと声をかけるべきか?まったく考えつかず、ただ突っ立っていました。

 

そのうち頭が「ぼー」として何も考えられなくなりました。

 

時間にして2~3時間だったのですが、とても長く感じました。

 

22時になったのだと思います。当時女性を22時以降働かせるとなんじゃらかんじゃら、規制があったのだと思いますが退社させられました。次の日は公休でしたが、「自宅待機」を仰せつかりました。

 

帰宅すると、悲鳴のような泣き声が頭からはなれず眠れませんでした。

 

いろいろなことを考えました。

とにかく「怖かった」

 

2日公休で、15日に出社しました。

 

また、大阪伊丹行の搭乗手続きの係でした。

 

第一ターミナルのJALのチェックインカウンターは「アイランドカウンター」と言ってA社カウンターの真ん前にありました。すでにお盆の帰省ラッシュが始まり「満席」でしたが、A社カウンターのベテラン女性社員が「お客様~~。ほんとにJALでいいんですか~?こちら空いてますよ~。」と私たちにも聞こえる大きな声でお客様に声をかけていました。今じゃ考えられませんが、そんなことありました。搭乗手続きをしていると、何でもないことでお客様が怒鳴りだしたりしました。

 

「荷物の中に、割れ物や貴重品はございませんか?」

「だから堕ちるんだよ!!!!!」「なにやってるんだ!!!!!」

 

カウンターで水をかけられたり、持っている手荷物を投げつけたりされている先輩を横目で見ながら怖くて手が震えました。

 

しばらく、ごはんがまともにたべられなくなり7キロ痩せました。

 

私の「記憶」

よく戦争を風化させないようにとか、忘れてはならないとか言いますが

 

「忘れない」ことなんです。忘れよう思っても「記憶」に残り「忘れない」ことなんです。

 

でもしばらくすると、すっかりそのことは「記憶」の片隅に追いやられ、ごはんも普通に食べましたし、楽しく仕事もできました。

 

人間は「記憶」に残すことと「忘れ去る」能力があるから、生きていけると思います。

忘れてはならないこともありますが「忘れる」能力があるから未来が見えてくるんです。

 

あの時の悲惨な事故は繰り返してはいけません。戦争も原爆も。絶対に繰り返してはいけません。

 

だけど私たちは生きていかなければならない。誰が悪いとか、何が悪いとかではなく「事故を再び起こさないために何をするのか?」「戦争を再び起こさないために何をするのか?」そちらに力を注ぎたい。

 

私が葬儀の仕事に携わるようになったきっかけは、この事故のあと考えたこと

 

「人の死に順番はない。歳をとっているとか若いとか、病気だとか健康だとか一切関係ない」「死は誰にでも公平に100%やってくる」このこと・・・・・

 

だから、いま自分の人生を歩みをしっかり考えてほしいんです。

「よかった。ありがとう。」と感謝で終われるような人生を送ってほしいんです。

 

終わった後の葬儀は、私のできる限りの知恵と能力を使って精一杯お世話させていただきます。

 

だから、安心しておまかせください。絶対後悔させないから!

 

この「記憶」が私を駆り立てます。

 

今日は520柱の御霊に    合掌

 

 

 

 

 

 

 

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