代表ブログ
葬儀社として考えていること「父の日」
6年前のFACEBOOK投稿より
今日、葬儀が終わった遺族の方が、お支払に来られました。葬儀社のセオリーでは、考える暇を与えずに集金してしまうんです。私は卑しい気持ちで、セオリーどおりに「集金にうかがいますが、ご準備はお済みですか?」と電話しました。喪主様がご自身でお越しになるとおっしゃるので、掃除なんかしながら待ちました。来られてにこやかにご兄弟で「御手洗さんのおかげでいい式になりました。ありがとうございました。」と深々と頭を下げられました。もちろん手抜きなどせず心を込めて務めさせていただきましたが、式の最中は随分泣いていらした喪主様がにこやかで、晴れ晴れとした表情でした。それを見てジーンと目頭が熱くなりました。実は喪主様はちょっと独特な宗教で打合せ中も親戚の方から罵声を浴びたりしておられ助けてあげられませんでした。最終的に親戚の意見をのみ、禅宗のお式になり、喪主様はずっと泣きながら耳をふさいでおられ途中退席されたのです。それでも出棺、火葬は終わりました。そんな事情で、私は卑しい気持ちで集金を急ぎました。どんな宗教であってもみなかけがえのない命。お葬式は故人の為でもありますが、私は残された人々のけじめをつける大切な式だと思っています。どうやって気持ちを切り替えられたのかわかりませんが、晴れ晴れと頭を下げられたご兄弟の姿を車が見えなくなるまで見送りました。私の仕事本当にやりがいあるわ。卑しい気持ちはちょっとにしとこ。
6年前の今日、長崎に来て初めてお手伝いさせていただいた、葬儀でした。初めてご遺族さまから、直接お金をいただきました。
私たち葬儀社はどこもそうだと思いますが
「一番つらく悲しいときに、そばにいて、寄り添い、一緒に考える。」
そんなお仕事なんです。
一番つらく悲しいときを、「葬儀」という形をもって心にけじめをつける。そのお手伝い。
その辛く悲しいときなのにも関わらず、かけていただく言葉が
「ありがとう。本当に助かりました。」
なんです。
「家族葬、家族葬」となにか流行になっているかのような、現在ですが時代はどんどん流れ、もはや家族葬ですら
「おくれてる。」印象さえ受けます。もう時代は「直葬」「密葬」へ流れているのです。
なんとなく「悪徳。ぼろ儲け」のイメージがある葬儀業界も、生き残りをかけて熾烈な競争をするようになってきました。
昔のような「いい値」で葬儀をするような消費者は減ってきました。(中には悪徳に騙される方もいらっしゃいますが・・・)
ネットで検索すれば、葬儀の底値や価格の違い、サービスの違いは一目瞭然です。それがかえって拍車をかけて、「あの手この手」で利益を追求することになっていくのです。
自虐的ですが、私は結婚2回しました。結婚は何度でも経験できます。でも、「生まれることと死ぬことは一度っきり」なんです。
自宅での葬儀がいい、家族葬がいい、直葬がいい
葬儀社営む私が言うのもなんですが、正直なんだっていいのですよ!
ちゃんと「心からお見送りができれば・・・」
形なんてはっきり言ってどうでもいいんですよ。宗教だってなんでもいいんですよ。無宗教だろうがなんだろうが・・・・
私がご遺族さまに大切にしていただきたいと思うのは、「故人を愛おしむ心」です。
通夜のさなか、夜中に最後だからと亡くなったお父様と枕を並べて寝た長女様がおられました。
朝私がご挨拶すると、笑って「一晩かけて、さんざんお父さんに文句言ってやったのですっきりしました。」とおっしゃた方がおられました。長年お父様に対して抱いていた歯がゆい思いや、言えなかった感謝の言葉を、やっとはきだすことができたのでしょう。
それで、心のけじめがつき、送り出せたなら葬儀の意味があったんだと思います。
実は私が葬儀業界へ入る決心をしたのも、実父の葬儀がきっかけです。
子供のころからとても厳しく、小学校低学年のころまでは剣道有段者の父から「しない」でバチン!!!!と叩かれる日々で、父の事は大嫌いでした。そんな厳しい昭和のおやじも病に侵され、歯科医だった父は医療の知識があるだけに自分の病状はよくわかっていました。
ある日病院のベッドのそばで、もうか細い声しか出ない父が私に話しかけてきました。
「千世。千世はお父さんの自慢の娘。でも・・・ごめんな。もうなんの力にもなってあげることができなくなった。ごめんな。自分でできるか?自分でできるか?ごめんな。もうお父さん、力になってあげることができんよ・・・」
私は涙がこらえきれずに「ありがとう。もう十分してもらったよ。なんも心配せんでいいよ。ゆっくり休んでね。自分でできるから。」と伝え、子供のころ父がずっと歌ってくれた「お山の杉の子」という童謡を枕元で歌いました。
その2か月後に父はゆっくりと息を引き取りました。
そして葬儀の間中、私は延々泣きました。顔が腫れあがりました。あまりに泣くので弟から「ねーちゃん、いい加減にせんね。」と言われたほどでした。
父との別れはとても時間がかかりました。10年近くたった今でも思い出すと涙が出ます。
そんなにつらい別れなのに、たった2、3日でけじめをつけるなんて無理な話です。
でも葬儀がなかったら、まだ気持ちを引きずっていたのかもしれません。
お父さんも人間。みなさんのお父さんもいつまでも一緒にいたくても、一緒にいることができなくなる日が必ずやってきます。
大切な日々を有意義に過ごしてください。
今日、当社では亡くなられたお父様をお預かりご安置しております。奥様は入院中で明日、仮退院して来られる予定です。息子様が東京から明日帰ってこられます。直葬です。
形なんてどうでもいいんですよ。今日はおりしも「父の日」です。
私も亡くなった父に、想いを馳せます。
みなさんもどうか、お父様を大切にしてください。あなたの命があるということは、お父様、お母様がいたからですよね。
「おとうさん、ありがとう。」